ストラテジ系

ビジネスインダストリ 重点教科書

ビジネスインダストリは、各業界特有のシステムからAIの利活用、電子商取引、IoT・組込みシステムまでを扱う分野です。用語の数は多めですが、それぞれ「どんな場面で使われる仕組みか」をイメージしながら覚えると得点源になります。

1. ビジネスシステム

「ビジネスシステム」と聞くと難しそうですが、要するに「それぞれの業界特有の仕事を助けるために作られた仕組み」のことです。八百屋さんにはレジがあり、銀行にはATMがあるように、業界ごとに「そこでしか使わない専用のシステム」が育ってきました。この章では、そうした代表的な仕組みと、近年急速に広がっているAIの活用について見ていきます。

流通・金融などの代表的なビジネスシステム

小売店や卸売業など、モノの流れを管理する仕組みをまとめて流通情報システムと呼びます。身近な例が、レジで会計をした瞬間に「いつ・何が・いくつ売れたか」を記録するPOS(Point of Sales:販売時点情報管理)システムです。この仕組みのおかげで、お店は売れ筋商品をすぐに把握し、仕入れに活かせます。レジに店員がいないセルフレジも、POSの仕組みを利用者自身が操作する形に進化させたものです。

銀行や証券会社などお金を扱う業界のシステムは金融情報システムとまとめて呼ばれます。人やモノの位置を人工衛星で特定するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の技術を業務に応用したものがGPS応用システムで、宅配トラックの現在地確認などに使われます。位置情報に地図や統計データを重ね合わせて分析するGIS(Geographic Information System:地理情報システム)、道路や信号を情報通信技術で効率化するITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)、高速道路の料金所を止まらず通過できるETC(Electronic Toll Collection:自動料金収受)システムも、どれも「位置」や「移動」に関わる代表的なビジネスシステムです。

小さなICチップに情報を記録するICカード、電波で情報をやり取りするRFID(ICタグ)は、交通系ICカードや商品タグなど幅広い場面で活躍しています。営業担当者の活動を記録・分析して効率化する営業支援システム(SFA:Sales Force Automation)、いつどこで作られ、どんな経路をたどって手元に届いたかを追跡できるトレーサビリティ、電力の需給を細かく調整する賢い電力網であるスマートグリッド、動画などのデータを利用者の近くのサーバから配信して高速化するCDN(Content Delivery Network)、現実の設備や製品の状態をコンピュータ上にそっくり再現するデジタルツイン、そして現実世界(フィジカル空間)とコンピュータ上の仮想空間(サイバー空間)を連携させるサイバーフィジカルシステム(CPS)も、近年よく耳にする用語です。実際の活用例としては、ICカードやRFIDを使った業務改善のほか、取引の記録を分散して改ざんしにくくするブロックチェーンを使ったトレーサビリティの確保や、契約条件を満たすと自動的に処理が実行されるスマートコントラクトが挙げられます。

行政分野のシステムとソフトウェアパッケージ

行政の仕事をデジタル技術で効率化する取り組み全体をデジタルガバメントと呼びます。その基盤となるのが、複数の役所で共通して使えるクラウド環境であるガバメントクラウドと、氏名や住所など社会の基本となる情報をきちんと整備したベースレジストリです。住民の情報を市区町村間でやり取りする住民基本台帳ネットワークシステム、行政の総合窓口サイトであるe-Gov、紙の窓口をなくしていく電子自治体、役所に出向かず手続きできる電子申請、行政機関が物品やサービスを電子的に調達する電子調達、入札を電子的に行う電子入札も代表例です。一人ひとりに番号を割り当てて行政手続きを効率化するマイナンバー制度、その番号を証明するマイナンバーカード、各種行政サービスをまとめて確認できるマイナポータル、災害や有事の情報を瞬時に伝える緊急速報やその一種であるJアラート(全国瞬時警報システム)もあわせて押さえておきましょう。

企業活動を支えるソフトウェアも、業務ごと・業種ごとにパッケージ化されています。会計や営業支援、販売管理など「どの会社でも共通して必要な業務」向けに作られたものを業務別ソフトウェアパッケージ、金融・医療・製造・運輸など「特定の業種でしか使わない機能」に特化したものを業種別ソフトウェアパッケージと呼びます。また、雑誌や書籍などの紙面をパソコン上でデザイン・編集するDTP(DeskTop Publishing)も代表的なソフトウェアパッケージの一つです。

AIの利活用の原則・活用領域

AIを社会や企業でどう使っていくべきか、その土台となる考え方が人間中心のAI社会原則です。ここには、AIはあくまで人間を中心に据えて活用すべきという「人間中心の原則」や、公平性・説明責任・透明性の原則などが含まれます。企業がAIを導入する際の指針となるAI利活用ガイドライン(AI利活用原則)、国際的に信頼できるAIのあり方を示す信頼できるAIのための倫理ガイドライン(Ethics guidelines for trustworthy AI)、研究者向けの倫理規範である人工知能学会倫理指針も、AIを安心して使うための共通ルールとして整備されています。

AIにはいくつかのタイプがあります。将棋や画像認識など特定の作業だけが得意な特化型AIと、人間のように幅広いタスクに対応できる汎用AIの違いは基本の分類です。用途で見ると、画像や音声を読み取るAIによる認識、定型的な作業を人に代わって行うAIによる自動化、対話形式でユーザーを助けるAIアシスタント、文章や画像などを新しく作り出す生成AI、文章・画像・音声など複数の種類の情報を同時に扱えるマルチモーダルAI、AIの出力に意図的なばらつきを持たせるランダム性という考え方もあります。

AIは研究開発、調達、製造、物流、販売、マーケティング、サービス、金融、インフラ、公共、ヘルスケアなど、実に幅広い領域で活用されています。具体的には、正解データをもとに将来を予測する教師あり学習を使った売上予測・り患予測・成約予測・離反予測、正解データなしに似た者同士をグループ分けする教師なし学習を使った顧客セグメンテーションや店舗クラスタリング、試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶ強化学習を使った自動車の自動走行制御や建築物の揺れ制御などが代表例です。ほかにも、複数のAI技術を組み合わせたサービスや、AIサービスが提供するAPIを自社サービスに組み込む活用、そして生成AIによる文章の添削・要約、アイディアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成なども、いまや身近な活用例になっています。

AI利用時のリスクと留意点

便利なAIにも注意点があります。AIがなぜその判断をしたのかを人間にも分かるように説明できるようにする説明可能なAI(XAI:Explainable AI)という考え方や、AIの判断に必ず人間が関わるようにするヒューマンインザループ(HITL)という仕組みは、AIに任せきりにしないための工夫です。AIの学習データやユーザーの使い方によって偏りが生まれるAI利用者の関与によるバイアス、AI自身の仕組みに由来する偏りであるアルゴリズムのバイアスは、公平性を損なう原因になります。AIが出した結果について誰が責任を負うのかというAIサービスの責任論も、実用化が進むにつれて重要性を増しているテーマです。

自動運転の判断を考えるときによく引き合いに出される「究極の選択」のたとえ話がトロッコ問題で、AIにどんな判断基準を持たせるべきかを考えるきっかけとしてよく紹介されます。もっともらしい嘘をAIが自信満々に答えてしまうハルシネーション、本物そっくりの偽の映像や音声を作り出すディープフェイクは、AIの出力を鵜呑みにしてはいけない代表的な理由です。AIの出力には、誤った情報・偏った情報・古い情報・悪意ある情報・出典不明の情報が混ざる可能性があることを踏まえ、利用者が「自分のデータをAIの学習に使わせない」と選べるAIサービスのオプトアウトポリシーの整備も進んでいます。AIは便利な道具である一方、最終的な判断には人間の関与が欠かせない、という視点を持っておきましょう。

2. エンジニアリングシステム

設計・生産を支えるIT活用の意義

工場や建設現場など、モノを設計し作り上げる分野をエンジニアリング分野と呼びます。この分野でITを活用する意義は、大きく分けて2つあります。ひとつは、設計や製造の作業そのものを自動化し、人の手作業では難しい精密な計算や図面作成をコンピュータに任せることです。もうひとつは、生産管理や在庫管理を効率化し、「今どれだけの部品や製品があるか」「次に何をどれだけ作るべきか」を正確に把握することです。この2つの視点を持っておくと、この章で紹介する個々のシステムの意味がつかみやすくなります。

CADと生産管理システム

設計図をコンピュータ上で作成するCAD(Computer Aided Design)は、エンジニアリングシステムの代表格です。手書きの図面と違い、修正や複製が簡単で、複数人での同時作業もしやすいのが特徴です。設計・製造・生産技術など、本来は順番に進む工程を同時並行で進めて開発期間を短縮する考え方をコンカレントエンジニアリングと呼びます。実際に作る前にコンピュータ上で動きや性能を試すシミュレーション、温度・振動・位置などの物理的な情報を機器から自動で読み取るセンシング技術も、設計・製造の精度を高める技術として押さえておきましょう。

ムダを減らす生産方式の工夫

工場での「作り方」そのものにも、効率化のための工夫が積み重ねられてきました。まとめて生産方式と呼びますが、代表例が、必要なものを必要なときに必要な分だけ作るJIT(Just In Time:ジャストインタイム)です。これにより、無駄な在庫を抱えずに済みます。JITの考え方を発展させ、あらゆるムダを徹底的に排除する経営手法がリーン生産方式で、後工程が必要な分だけ前工程に部品を発注する仕組みであるかんばん方式は、JITを現場で実現するための具体的な道具といえます。

生産設備を切り替えるだけで複数の種類の製品を柔軟に作れる仕組みをFMS(Flexible Manufacturing System:フレキシブル生産システム)と呼びます。多品種を少しずつ作る現代の製造業に適した仕組みです。また、完成品を作るのに必要な部品や材料の量とタイミングを逆算して計画するMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)は、「何を」「いつまでに」「どれだけ」用意すればよいかをコンピュータで管理する仕組みで、生産管理システムの基本的な考え方の一つです。

3. e-ビジネス

「e-ビジネス」とは、インターネットを使ってモノやサービスを売り買いするビジネスの総称です。私たちが普段何気なく使っているネットショッピングやキャッシュレス決済も、すべてこのe-ビジネスの一部です。便利な反面、リスクもあることを踏まえて理解していきましょう。

電子商取引の特徴

インターネット上でモノやサービスを売買することを電子商取引と呼びます。実店舗を持たずに商売ができる無店舗販売が可能になったことで、店舗の家賃や店員の人件費といったコストを大きく減らし、少ない元手でも事業を始めやすくなりました。売れ筋商品だけでなく、少しずつしか売れない多数のニッチな商品を積み上げることで大きな売上を作る戦略をロングテールと呼びます。実店舗では置く場所に限りがありますが、ネット上では在庫スペースの制約が小さいため、こうした戦略が取りやすいのです。基本部分は無料で使わせて、より便利な機能や特典に対してお金を払ってもらう課金モデルをフリーミアムと呼び、スマホアプリなどでよく見かける仕組みです。

電子商取引の分類

電子商取引にはいくつかの型があります。企業と消費者の間で行われる一般的なネット通販などを含むEC(Electronic Commerce:電子商取引)が基本形です。ネット上の情報をきっかけに実店舗へ足を運んでもらうO2O(Online to Offline)、オンラインとオフラインの垣根をなくして一体のサービスとして提供するOMO(Online Merges with Offline)は、ネットとリアルの店舗を組み合わせる考え方の違いとして対比して覚えておくとよいでしょう。企業間で発注書や請求書などのデータを標準化された形式でやり取りするEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)、銀行間でお金を電子的に移動させるEFT(Electronic Fund Transfer:電子資金移動)は、企業同士や金融機関同士の裏側を支える仕組みです。

スマートフォンの通信料金と一緒に支払う「キャリア決済」、カードをかざすだけで支払える「非接触IC決済」、スマホ画面のコードを読み取る「QRコード決済」など、現金を使わずに支払いを済ませる仕組みをまとめてキャッシュレス決済と呼びます。金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた新しい金融サービスをフィンテック(FinTech)、インターネットを通じて不特定多数の人から少しずつ資金を集めるクラウドファンディング、デジタルデータに「世界に一つだけ」という証明を付与できるNFT(Non-Fungible Token)も、e-ビジネスを語るうえで欠かせない用語です。

電子商取引の具体的な利用例

実際にどんなサービスとして電子商取引が使われているかも見ておきましょう。商品を出品する売り手と買いたい人をつなぐ場を提供するeマーケットプレイス、複数のお店が集まるオンラインモール、参加者同士が値段を競り合う電子オークションは、いずれもネット上の「市場」を作る仕組みです。銀行の窓口に行かずに振込や残高照会ができるインターネットバンキング、株式などの売買をネット上で行うインターネットトレーディング、買い手が代金をいったん第三者に預け、商品が無事届いてから売り手に支払うエスクローサービスは、安心して取引を進めるための仕組みです。

前章でも紹介したICカード・RFID応用システムは、電子マネーの決済などにも活用されています。不特定多数の人に仕事を依頼できるクラウドソーシング、現金を電子データに置き換えて使う電子マネー、ブロックチェーン技術を使った暗号資産、そして中央銀行が発行するデジタル形式の通貨である中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)も、お金の姿がどんどんデジタルに変わっていく流れを示す代表的な用語です。

電子商取引のリスクとセキュリティ対策

便利な電子商取引にも、リスクへの備えが欠かせません。複数の銀行口座やクレジットカードの情報を一つのサービスでまとめて管理・閲覧できるアカウントアグリゲーションは便利な一方、多くの個人情報を一箇所に集めることになるため、セキュリティの重要性が高まります。オンラインで本人確認を完結させるeKYC(electronic Know Your Customer)は、対面での本人確認が難しいネット取引において、なりすましや不正利用を防ぐための重要な仕組みです。犯罪で得たお金の出どころを分からなくする「マネーロンダリング」と、犯罪組織に資金が渡るのを防ぐ「テロ資金供与対策」に取り組む仕組みをAML・CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)ソリューションと呼びます。電子商取引が広がるほど、こうした不正利用対策の重要性も増していくと理解しておきましょう。

4. IoTシステム・組込みシステム

身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる時代になりました。この章では、そうしたIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用したシステムと、家電や機械に組み込まれている組込みシステムについて見ていきます。

身近に広がるIoT活用機器

空から撮影や配送を行うドローン、現実の景色にデジタル情報を重ねて見せるARグラス、現実世界と仮想世界を融合させて見せるMRグラス、仮想空間に没入できるVRゴーグル、日常的に装着できるスマートグラス、声で操作できるスマートスピーカーは、いずれも私たちの生活に入り込んできたIoT機器です。インターネットにつながって様々な情報をやり取りできる自動車をコネクテッドカーと呼び、その先にあるのが人が運転しなくても走行できる自動運転です。自動運転にはどこまで人が関わるかによって段階があり、これを自動運転レベルと呼びます。つながる(Connected)・自動運転(Autonomous)・共有(Shared & Services)・電動化(Electric)という自動車業界の4つの技術トレンドの頭文字を取ったCASE、自動車を「所有するもの」から「使うたびに利用するサービス」として捉え直すMaaS(Mobility as a Service)、コードを挿さずに離れた場所から電力を送るワイヤレス給電も、次世代のモビリティを語るうえで欠かせない用語です。

産業・都市・生活を支えるIoTシステム

IoTは工場や街づくりにも活用されています。産業用・医療用・介護用・災害対応用など、様々な用途に特化したロボットが現場で活躍しています。IoTがもたらす効果は、「監視」「制御」「最適化」「自律化」の4つに整理できます。まず遠隔から状態を見守る監視から始まり、次に機器を遠隔操作する制御へ、さらに人の判断なしに最適な状態へ調整する最適化へ、最終的には機器がみずから判断して動く自律化へと段階的に進化していく、とイメージすると理解しやすいでしょう。こうした仕組みを支えるのが、データやアプリケーションをインターネット経由で利用できるクラウドサービスです。

都市全体をIoTでつなぎ交通やエネルギーを効率化するスマートシティ、工場の設備をIoTでつないで生産性を高めるスマートファクトリー、センサーやドローンを使って農作業を効率化するスマート農業、カメラとAIで製品の外観検査などを自動化するマシンビジョン、家庭内の電力使用量を見える化・自動制御するHEMS(Home Energy Management System)も、それぞれの現場でIoTを活かす代表例です。活用例としては、産業用のドローンやロボットの活用方法、太陽光などのエネルギーの収集方法や利用方法、そして金融・農業・医療・物流など各種産業における活用方法が挙げられます。

組込みシステム

家電や機械の内部に組み込まれ、特定の機能を実現するためだけに動くコンピュータシステムを組込みシステムと呼びます。工場で組み立てや溶接などを行う産業用ロボットを動かす頭脳の役割を果たすのも組込みシステムですし、機械の駆動部分や制御技術全般を指すロボティクスという分野でも中心的な役割を担っています。機器の内部に組み込まれた基本的な制御プログラムをファームウェアと呼び、これが更新されることで、購入後の機器の機能が改善されることもあります。私たちが毎日使う携帯電話携帯情報端末も、内部では数多くの組込みシステムが連携して動作しており、身近な組込みシステムの代表例といえます。

なお、本項目(IoTシステム・組込みシステム)はIPAシラバスの用語例数が他の項目に比べて少なめですが、シラバス原典に掲載されている用語例はすべて上記に反映済みです。

本番での解き方

  • ビジネス分野のシステム名は「英語の頭文字(POS・GPS・ETC・SFA等)と日本語の正式名称」をセットで覚える
  • AIの用語は「原則・指針(何を守るか)」「活用領域・目的(どこで使うか)」「留意点(何に気をつけるか)」の3分類を意識して整理する
  • e-ビジネスはO2OとOMOなど似た略語同士の意味の違いを混同しやすいので、対比表を作って覚える
  • JIT・かんばん方式・リーン生産方式はセットで「ムダをなくす生産の工夫」として一括りに覚えると効率的
  • IoTシステムはCASE・MaaS・HEMSなど略語が多いので、身近な製品・サービスと結びつけてイメージ記憶する

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