ストラテジ系

企業活動 重点教科書

企業活動は用語の数が多く暗記科目に見えがちですが、「経営の仕組み」「データで問題を解決する流れ」「お金の流れを読む力」という3本柱で捉えると驚くほど整理しやすくなります。計算問題(損益分岐点)も含めて得点源にしていきましょう。

1. 経営・組織論

会社という仕組みは、思いつきで動いているわけではありません。何のために存在し、どんな資源を使い、どんな形で人を動かすのか——そこには一定の考え方があります。この章では、会社を動かす土台となる「経営」と「組織」の基本を見ていきます。

1-1. 企業活動と経営資源、そして企業理念

会社が事業を続けていくためには、限られた資源をうまく使う必要があります。よく言われるのが、ヒト・モノ・カネ・情報という4つの経営資源です。人材をどう育てて配置するか、設備や商品をどう管理するか、資金をどう調達し使うか、そして情報をどう活かすか——この4つのバランスを取ることが経営の基本と言えます。

そして、会社が何のために活動するのかを言葉にしたものが経営理念(企業理念)です。最近では、これをさらに具体的に3つの言葉に分けて示すMVV(ミッション,ビジョン,バリュー)という考え方がよく使われます。ミッションは「今、何を果たすべき使命か」、ビジョンは「将来どんな会社でありたいか」、バリューは「そのために大切にする価値観・行動基準」を指します。似た考え方に、そもそも「なぜこの事業をやるのか」という存在意義を軸に経営を進めるパーパス経営があり、また社員一人ひとりを単なる労働力ではなく将来の価値を生む資本として捉え、育成や配置に積極的に投資する人的資本経営という考え方も広がっています。

会社の活動は社内だけで完結しません。株式会社では、株主が集まって重要な意思決定を行う株主総会が開かれ、一定期間の経営成績をまとめる決算が行われます。決算の内容はディスクロージャー(情報開示)として広く公表され、その内容が正しいかどうかを外部の専門家がチェックする監査という仕組みもあります。こうした透明性の確保は、会社を取り巻くさまざまな関係者、つまりステークホルダ(株主・従業員・取引先・地域社会など)との信頼関係を支える土台になります。

現代の企業には、利益を追うだけでなく社会の一員としての責任を果たすことも求められます。これを社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)と呼び、投資家の側からも、環境や社会に配慮した企業を選んで投資しようという社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)という動きが広がっています。具体的な取り組みとしては、IT機器やシステムの省電力化・環境負荷低減を図るグリーンIT、商品やサービスが生み出すまでに排出される温室効果ガスの量を示すカーボンフットプリント、2030年までの世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)への対応が代表例です。こうした取り組みの積み重ねが、会社の名前やロゴから連想される信頼・価値であるコーポレートブランドを育てていきます。

1-2. 経営管理の基本サイクル

経営資源を「使いっぱなし」にせず、目標に向けて計画的に動かす活動を経営管理と呼びます。まず会社は具体的な経営目標を掲げ、それを達成するために財務・資産・人事・情報といった各分野の管理を行います。

経営管理の定番として押さえておきたいのが、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)を繰り返しながら少しずつレベルアップしていくPDCAのサイクルです。一方で、変化の激しい状況では計画に時間をかけている余裕がないこともあります。そこで注目されているのが、観察(Observe)→情勢判断(Orient)→意思決定(Decide)→行動(Act)を高速に回すOODAループです。PDCAが「じっくり計画してから動く」のに対し、OODAは「まず状況を見て素早く動く」というイメージで捉えると違いが分かりやすいでしょう。

また、地震や感染症の流行、システム障害といった不測の事態が起きても事業を止めない、あるいは早く復旧させるための計画をBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)、それを日頃から訓練・改善しながら運用していく体制をBCM(Business Continuity Management:事業継続管理)と呼びます。そして、どんなリスクがあり、それがどれくらい重大かを洗い出して評価するリスクアセスメントは、BCPを作る際の出発点となる考え方です。

1-3. ヒューマンリソースマネジメント(人的資源管理)

会社にとって「人」は最も重要な経営資源の一つです。人材をどう育て、どう活かすかという考え方全体をHRM(Human Resource Management:ヒューマンリソースマネジメント)と呼びます。

人を育てる方法にはいくつかの種類があります。上司や先輩が対話を通じて答えを引き出すコーチング、経験豊富な人が助言や手本を示すメンタリング、実際の仕事を通じて学ぶOJT(On the Job Training)、それに対して研修室などで座学として学ぶOff-JT、パソコンやスマホで好きな時間に学べるe-ラーニングがあります。近年特に注目されているのが、時代の変化に対応するために新しいスキルを学び直すリスキリング、そして一人ひとりの理解度や進み方に合わせて学習内容を調整してくれるアダプティブラーニングです。社員のキャリアを長期的に計画・支援する仕組みであるCDP(Career Development Program)も、人材育成の重要な柱です。

心の健康を保つメンタルヘルスへの配慮、AIやデータを使って採用・評価・育成を効率化するHRテック(HRTech)、目標を自分で立てて自主的に管理するMBO(Management by Objectives and self-control:目標による管理)、優秀な人材の離職を防ぐリテンション、社員一人ひとりの能力や適性を会社全体で把握し最適に配置するタレントマネジメントも頻出の用語です。人を導く力であるリーダーシップ、仕事へのやる気そのものを指すモチベーション、単なるやる気を超えて仕事に主体的に打ち込んでいる状態を示すワークエンゲージメント、そして仕事と私生活の調和を保つワークライフバランス、多様な人材がそれぞれの個性を発揮できる環境づくりを目指すDE&I(Diversity, Equity & Inclusion:多様性・公平性・包摂性)も、現代の人材マネジメントに欠かせない考え方です。

リーダーシップの在り方にもいくつかの理論があります。状況によって最適なリーダーシップの型は変わるというコンティンジェンシー理論、特定の一人ではなくチームで役割を分担してリーダーシップを発揮するシェアードリーダーシップ、部下に指示するのではなく支え奉仕する姿勢で導くサーバントリーダーシップなどです。また、働き方そのものも多様化しており、自宅で働く在宅勤務、外出先で働くモバイルワーク、本拠地から離れたオフィスで働くサテライトオフィス勤務、旅行先で働きながら休暇も取るワーケーションといったテレワークの類型が広がっています。ただし場所が自由になる分、上司が部下の状況を把握しにくくなる労務管理の困難さといった経営上の留意点もあわせて出題されます。

1-4. 経営組織の形態

会社の内部の作り方、つまり組織の形にも種類があります。上から下へ命令系統が一本にまとまっている階層型組織を基本形として、事業ごとに部門を分けて権限を渡す事業部制、営業・製造・経理のように機能ごとに分ける機能別組織(職能別組織)、そして機能別の軸と製品・プロジェクト別の軸を掛け合わせたマトリックス組織があります。マトリックス組織では一人の社員が二人の上司から指示を受けることもあり、これが特徴でもあり難しさでもあります。

そのほか、特定のプロジェクトのために一時的に編成されるプロジェクト組織、事業ごとに独立採算の「会社」のように扱うカンパニー制、複数の子会社を株式保有という形でまとめて統括する持株会社もよく出題されます。経営の重要な役職を表すCxO(Chief x Officer)という総称もあり、会社全体の経営を統括するCEO(最高経営責任者)、情報システム戦略を統括するCIO(最高情報責任者)などが代表例です。

1-5. 社会におけるIT利活用の動向

最後に、企業活動を取り巻く社会全体の変化にも目を向けましょう。コンピュータの処理能力の向上、扱われるデータの多様化と量の増加、そしてAIの進化は、企業の意思決定のあり方そのものを変えつつあります。これまで人間の経験や勘に頼っていた判断が、データを起点にした分析へとシフトしているのです。

こうした変化は、蒸気機関・電力・コンピュータに続く4番目の大きな技術革新である第4次産業革命、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたSociety5.0、あらゆるモノがネットにつながり快適さが底上げされる超スマート社会、データに基づいて意思決定が行われるデータ駆動型社会といった言葉で表現されます。デジタル技術を使って会社のビジネスモデルや働き方そのものを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)、環境負荷の低減と経済成長を両立させるグリーントランスフォーメーション(GX)、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルは、いずれも社会課題の解決とIT利活用が結びついた例です。労働市場の変化や人口動態、地球環境やエネルギー問題、教育格差といった社会課題を解決する手段としてITが期待されており、その後押しとなる制度として、大胆な規制緩和で新技術の実証実験を進めやすくする国家戦略特別区域法(スーパーシティ法)、官と民が持つデータの活用を推進する官民データ活用推進基本法、デジタル社会実現の基本理念を定めたデジタル社会形成基本法が整備されています。

2. 業務分析・データ利活用

「何となく忙しい」「なぜかミスが多い」——こうした職場のモヤモヤを、勘や経験だけに頼らず、事実とデータに基づいて解き明かすための手法がこの章のテーマです。業務を正しく把握し、データをわかりやすく見せ、そこから意思決定につなげる一連の流れを学びます。

2-1. 業務の把握と分析手法

業務を改善する第一歩は、現状を正しく知ることです。情報を集める方法には、多くの人に同じ質問をして回答を集めるアンケート、対象者と直接対話しながら聞き取るインタビュー、実際に現場に足を運んで観察するフィールドワークがあります。インタビューにも種類があり、質問項目をあらかじめ細かく決めておく構造化インタビュー、大まかなテーマだけ決めて自由に話してもらう半構造化インタビュー、ほぼ決め事をせず自由に対話する非構造化インタビューに分けられます。目的に応じて使い分けることが大切です。

集めた情報を分析する手法もいろいろあります。売上や不良品の原因などを大きい順に並べた棒グラフと、その累積比率を示す折れ線グラフを組み合わせたパレート図は、「全体の大部分の問題は一部の原因から生まれる」という考え方(いわゆる2割8割の法則)を可視化するのに使われ、これを応用して重要度の高い順にA・B・Cとランク分けする手法がABC分析です。ある結果(特性)がどんな原因(要因)から生まれているかを魚の骨のような図で整理する特性要因図(フィッシュボーンチャート)、工程のばらつきが正常範囲に収まっているかを時系列で確認する管理図、目標達成に必要な手段を段階的に枝分かれさせて整理する系統図もよく使われます。

プロジェクトの計画づくりには、作業の順序と所要時間を矢印でつないで表すPERT(アローダイアグラム)が便利です。この図の中で、遅れると全体の完了が遅れてしまう最も余裕のない経路をクリティカルパスとして見つけ出す分析をクリティカルパス分析と呼びます。データの傾向を数式で表す際には、実際の値と予測値のズレが最小になるように直線や曲線を当てはめる最小二乗法を使い、これによって求めた式で将来を予測する手法が回帰分析です。ここで注意したいのが、「二つのことがらが一緒に動いて見える(相関)」ことと「片方がもう片方の原因になっている(因果)」ことは別物だという点です。実は別の共通原因が両方に影響しているだけなのに、あたかも直接関係があるように見えてしまう擬似相関という落とし穴もあり、これは試験でも頻出のひっかけポイントです。こうした手法を組み合わせて、パレート図や回帰分析を業務改善に活かすのが実務での典型的な使い方です。

2-2. 図表・グラフによるデータ可視化

分析した結果は、伝わらなければ意味がありません。目的に合ったグラフを選ぶことが重要です。量の大小を比べる棒グラフ、時間の推移を見る折れ線グラフ、二つの数値の関係を点で示す散布図、複数の項目を格子状に整理するマトリックス図、データのばらつきや中央値を箱の形で示す箱ひげ図、数値の大小を色の濃淡で表すヒートマップ、複数の評価項目をクモの巣状に表すレーダーチャート、データの分布を柱状に示すヒストグラム、二つのカテゴリの構成比を面積で表すモザイク図があります。

このほか、複数の項目を掛け合わせて集計するクロス集計表(分割表)、多数の項目間の相関をまとめて示す相関係数行列散布図行列、二種類のグラフを重ねて表示する複合グラフ、単位の違う二つのデータを一つのグラフで表す2軸グラフ、原因を階層的に枝分かれさせて整理するロジックツリー、アイデアや概念のつながりを図示するコンセプトマップも押さえておきましょう。データを扱う技術面では、表計算ソフトなどでよく使われるカンマ区切りのファイル形式であるCSV(Comma Separated Value)、地図データを扱う形式であるシェープファイル、SNSなどで一緒に使われやすいキーワードの組み合わせである共起キーワードが用語例に挙がっています。

ここで忘れてはならないのが、グラフは正しく作らないと人をだましてしまうという点です。目盛りの一部を省略して差を誇張したグラフなど、無駄な装飾や誤解を招く要素をチャートジャンクと呼び、こうした不適切なグラフに惑わされないこと、そして自分でもそうしたグラフを作らないことが求められます。データを分析・加工するための専用のソフトウェアパッケージ(ツール)を目的に応じて選び活用することも、実務では重要なスキルです。

2-3. データの種類・前処理と統計情報の活用

データ利活用の出発点は、どんなデータをどう集めるかです。調査によって得られる調査データ、実験によって得られる実験データ、人がシステムを操作した記録である行動ログデータ、機械の稼働状況を記録した稼働ログデータ、位置情報を扱うGISデータなどがあります。データの性質による分類もあり、数値で表せる量的データとそうでない質的データ、自分たちで直接集めた1次データと他者が集めたものを利用する2次データ、データについての情報(作成日や作成者など)であるメタデータ、表形式などで整理された構造化データとそうでない非構造化データ、時間の経過に沿って並んだ時系列データ、ある一時点で複数の対象を集めたクロスセクションデータという区別もあります。

集めたデータはそのまま使えないことが多く、前処理が欠かせません。全体から一部を抜き出すサンプリング、表記ゆれをそろえて同一の対象だとわかるようにする名寄せ、極端な値である外れ値・異常値や、値が抜けている欠損値への対処、データに意味のタグを付けるアノテーション、季節による変動をならす季節調整や移動平均、文章を扱う自然言語処理、画像を扱う画像処理が代表的な前処理・活用例です。

統計を扱う際には、分析対象全体である母集団から一部を選び出す標本抽出の考え方も重要です。全員を調べる全数調査(国勢調査が代表例)、アンケート調査、全員から均等な確率で選ぶ単純無作為抽出、グループに分けてから抽出する層別抽出、段階を踏んで抽出する多段抽出などがあります。差が本当に意味のあるものかを統計的に確かめる仮説検定、判断の基準となる有意水準、本当は差がないのに「差がある」と誤って判定してしまう第1種の誤り、逆に本当は差があるのに「差がない」と見逃してしまう第2種の誤りは、名前と内容が対応しにくいので注意が必要です。また、測定のばらつきの少なさを表す精度と真の値からのズレを表す偏りは別の概念であり、集め方が偏っている選択バイアスや情報の伝わり方が偏っている情報バイアスといった統計的バイアス、人間の思い込みによる判断の歪みである認知バイアスも知っておくべきポイントです。データが何を意味するかを正しく読み取るには、そのデータが発生した現場を実際に確認することや、業界特有の知識であるドメイン知識を持つことが欠かせません。平均値・中央値・最頻値といった各代表値の性質の違いを理解し、統計情報の誇張表現に惑わされないようにすることも大切な視点です。

2-4. データサイエンスとビッグデータ

大量のデータから価値を引き出す学問・技術を総称してデータサイエンスと呼び、それを専門的に担う人材がデータサイエンティストです。データサイエンスでは、個々の事例から一般的な法則を導き出す帰納的推論が重視されますが、限られた事例から導いた結論が必ずしも常に正しいとは限らないという利点と欠点の両方を理解しておく必要があります。

経営に必要な情報をデータから引き出して意思決定に役立てる仕組みをBI(Business Intelligence)と呼び、それを支えるために社内の様々なデータを整理・蓄積しておくデータウェアハウス、大量のデータの中から規則性や関連性を見つけ出すデータマイニング、扱いきれないほど巨大で多様なビッグデータ、そして文章データから有用な情報を取り出すテキストマイニングが代表的な技術です。データを集めてから活用するまでの一連の流れをデータサイエンスのサイクルと呼びます。

ビッグデータは、誰でも利用できるよう公開されたオープンデータと、個人に関するパーソナルデータなどに分類され、それぞれの活用方法や、プライバシーへの配慮といった活用時の留意点・課題をあわせて理解しておくことが求められます。

2-5. 意思決定と問題解決手法

分析した結果を、最終的には「どう行動するか」という意思決定につなげます。条件による結果の枝分かれを樹形図で表すデシジョンツリー、現実を単純化して表現するモデル化(結果が一つに決まる確定モデル、確率で結果が変わる確率モデル)、コンピュータ上で仮想的に試してみるシミュレーション、そのシミュレーション結果を実際の観測データに近づけて精度を高めるデータ同化があります。そのほか、将来の値を見積もる予測、似たものをまとめるグルーピング、規則性を見つけ出すパターン発見、最も良い組み合わせを探す最適化は、いずれもデータに基づく意思決定の代表的な手法です。身近な例では、商品をどれだけ仕入れて保管するかを管理する在庫管理、取引先にどこまで信用を与えるかを判断する与信管理、いつ・どれだけ発注するかを決める発注方式があり、こうした「与えられた条件のもとでの意思決定」や在庫管理を題材にした業務把握は、試験でもよく出題されるテーマです。

最後に、アイデアを出し合って問題を解決する手法として、否定せずに自由に意見を出し合うブレーンストーミング、まず各自が付箋などに書き出してから共有するブレーンライティング、出てきたアイデアを似たもの同士でグループ化して整理する親和図法があります。データ分析だけでなく、こうした人が集まって考えを整理する手法もあわせて押さえておきましょう。

3. 会計・財務

「利益って結局どうやって決まるの?」「会社の通信簿はどこを見ればいいの?」——会計・財務は数字が並ぶだけに苦手意識を持たれがちですが、ITパスポートで問われるのは基本用語の意味と、ごく簡単な計算だけです。ここでしっかり整理しておきましょう。

3-1. 売上と利益の関係、損益分岐点

会社が商品やサービスを売って得たお金の総額が売上です。ここから商品を作る・仕入れるためにかかったお金である原価を差し引いたものが粗利益、さらに販売や管理にかかる費用を差し引いたものが営業利益です。つまり「利益」といっても段階によって呼び方が変わる、という点をまず押さえておきましょう。

費用にも二つの種類があります。売る量が増えれば増えるほど比例して増えていく費用が変動費(材料費など)、売る量に関係なく一定額かかり続ける費用が固定費(家賃や正社員の給料など)です。売上高に対して変動費が占める割合を変動費率と呼びます。

この3つの関係を使って求められるのが損益分岐点、つまり「利益がちょうどゼロになる、これ以上売れば黒字、これ以下だと赤字という境目の売上(または販売量)」です。損益分岐点の売上は次の式で求められます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

たとえば固定費が100万円、変動費率が0.6(売上の60%が変動費)だとすると、損益分岐点売上高は100万円 ÷(1 − 0.6)=250万円となります。つまりこの会社は、月の売上が250万円を超えて初めて黒字になる、ということです。ITパスポートでは、こうした損益分岐点や利益率を求める簡単な計算問題が定番として出題されるので、固定費・変動費・変動費率の関係を式ごと覚えておくと安心です。

3-2. 財務諸表の種類と役割

会社の経営状態を数字で表した書類をまとめて財務諸表と呼びます。中でも代表的なのが二つです。ある時点での会社の財産の状態、つまり「何を持っていて、どこからそのお金が来たか」を一覧にした貸借対照表と、一定期間にどれだけ利益を上げたかを示す損益計算書です。さらに、実際にお金がどれだけ会社に出入りしたかを示すキャッシュフロー計算書もあります。利益が出ていても手元の現金が足りずに支払いができなくなる「黒字倒産」という事態もあり得るため、利益とキャッシュ(現金)は別物として管理する必要がある、という点がこの計算書の存在意義です。

貸借対照表は、会社が持っている財産である資産と、他人から借りているお金である負債、そして株主から出資してもらった資本などである純資産の3つに分けて表されます。資産はさらに、1年以内に現金化しやすい流動資産(現金や商品など)と、長期間使い続ける固定資産(土地や建物など)、開業費用のように何年かに分けて費用化する繰延資産に分かれ、形があるかないかで有形資産無形資産にも分類されます。同じように負債も、1年以内に返済すべき流動負債と、返済までに時間的余裕がある固定負債に分かれます。

こうした財務諸表の数字は、そのまま眺めるだけでなく比率にして初めて意味を持ちます。短期的な支払い能力を示す流動比率(流動資産÷流動負債で計算し、高いほど安全とされます)、儲ける力を示す収益性、無駄なく成果を出せているかを示す効率性、財務的に安定しているかを示す安全性、投資した金額に対してどれだけの利益が得られたかを示す投資利益率は、いずれも財務諸表を分析する際の代表的な視点です。基本的な財務諸表の読み方と、こうした財務指標を組み合わせて会社の実力を分析することが、この分野の実務的なゴールになります。

3-3. 税に関する基礎知識

最後に、企業活動と切り離せない税金についても触れておきます。商品やサービスの購入時に上乗せされる消費税、会社が得た所得(利益)に対してかかる法人税は、企業経営に直結する代表的な税金です。また、消費税の仕入税額控除を受けるために、決められた形式の請求書(適格請求書)を発行・保存する制度である適格請求書等保存方式(インボイス制度)は、近年の税制改正で導入された仕組みとして出題可能性が高い用語です。取引先が発行する請求書が適格請求書かどうかで、自社が納める消費税の計算が変わってくる、という点が制度の骨子です。

本番での解き方

  • MVV・HRM関連の略語(MBO・CDP・DE&Iなど)は「何の頭文字か」より「日本語で何を意味するか」を軸に覚えると混同しにくい
  • PDCAとOODAは「じっくり計画してから動く」対「まず見て素早く動く」という対比で覚える
  • パレート図・ABC分析・特性要因図・回帰分析は、それぞれ何のためのグラフ・手法かを一言で説明できるようにしておく
  • 損益分岐点は「固定費 ÷(1−変動費率)」の式を丸暗記し、簡単な数字で一度自分で計算してみる
  • 貸借対照表は資産=負債+純資産という構造をイメージ図で覚えると、流動・固定の分類も整理しやすい

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