ストラテジ系

法務 重点教科書

法務は「何が法律で禁止されているか」「なぜその法律があるか」を理解すれば得点源になる分野です。知的財産・セキュリティ・労働取引・標準化の4テーマに分けて整理していきましょう。

1. 知的財産権

みなさんが作った音楽や絵、書いたプログラムには、実は自動的に「権利」が発生していることをご存知でしょうか。法務の分野では、こうした「人が生み出したもの」を守るルールを学びます。堅苦しく感じるかもしれませんが、根っこにあるのは「頑張って作ったものを勝手に横取りされたら悲しい、だから法律で守ろう」という、とてもシンプルな発想です。

著作権法が守るもの

音楽、映像、漫画、そしてコンピュータプログラムまで、人の頭で考えて作り出したもの(知的創作物)には、作った瞬間に自動的に著作権が発生します。特許のように役所に登録する必要はありません。この著作権があるおかげで、他人の作品を無断でコピーする行為や、違法にアップロードされたと知りながらコンテンツをダウンロードする行為は、法律違反になります。「タダで手に入るから」という気軽さとは裏腹に、違法アップロードと知っての入手は立派な違法行為なのです。

著作権を持つのは作者だけではありません。歌手や放送事業者のように、作品を演奏したり放送したりして人々に届ける役割を担う人にも権利が発生します。これを無断で公衆に伝達する行為も違法です。一方で、著作権は絶対に例外のないルールというわけではなく、学校の遠隔授業など教育目的であれば、著作物を特例的に利用できる場面も用意されています。

近年特に注目されているのが、生成AIと著作権の関係です。AIが学習のために大量のデータを取り込む場面と、AIが新しく文章や画像を生成する場面、それぞれで著作権の観点から気をつけるべき点があります。AIに読み込ませたデータの権利関係や、AIが作った成果物が誰かの作品に似すぎていないかなど、これまでの著作権の考え方をAI時代にどう当てはめるかが、いま盛んに議論されているテーマです。

産業財産権と不正競争防止法

発明やデザイン、ブランド名のように、役所(特許庁)に登録することで初めて権利として認められるものを産業財産権と呼びます。著作権が「作った瞬間に自動発生」するのに対し、産業財産権は「登録して初めて守られる」という点が大きな違いです。産業財産権には4つの種類があります。技術的な発明を守る特許法(インターネットを使った独自のビジネスの仕組みを保護するビジネスモデル特許もこの一種です)、小さな工夫や改良を守る実用新案法、製品の見た目やデザインを守る意匠法、会社名やロゴなどのブランドを守る商標法です。商標のうち、商品につけるマークをトレードマーク、サービスにつけるマークをサービスマークと呼び分けます。産業財産権も著作権と同様、無断で使用すれば違法となり、AIが学習に使うデータやAIが生成する成果物についても、産業財産権の観点からの注意が必要とされています。

では、著作権にも産業財産権にも当てはまらない大切な情報はどう守られるのでしょうか。たとえば門外不出のレシピや、独自に集めた顧客データベースのような、会社にとっての秘密の情報です。これらを保護するのが不正競争防止法で、公開されていない営業秘密や、対価を得て提供される限定提供データを不正に持ち出したり使ったりする行為を規制しています。

ソフトウェアライセンスという契約の形

ソフトウェアは著作物なので勝手にコピーはできませんが、権利者が「この条件なら使っていいですよ」と他者に利用を許可する契約を結ぶことがあります。これをソフトウェアライセンスと呼びます。1本ずつ買うのではなく企業がまとめて使用権をまとめ買いするボリュームライセンス契約、特定の建物や拠点の中なら台数を気にせず使えるサイトライセンス契約、社員一人ひとりのアクセス権として購入するCAL(Client Access License)など、企業向けにはさまざまな契約形態があります。

ソフトウェアの性質による分類も重要です。プログラムの中身(ソースコード)が公開され誰でも改良できるオープンソースソフトウェア、無料で使えるフリーソフトウェア、著作権自体を放棄して誰でも自由に使えるパブリックドメインソフトウェアは、それぞれ「公開の度合い」や「権利の有無」が異なります。購入したソフトが正規品であることを確認するアクティベーション(インターネット経由での認証など)や、買い切りではなく利用期間に応じて料金を払い続けるサブスクリプションという利用形態も、いまや身近な存在です。試験では、自社の使い方に合ったライセンス条件を正しく理解して契約することが活用例として問われます。

法律には書かれていない権利

最後に、明文化された法律こそ存在しないものの、これまでの裁判の積み重ね(判例)によって認められてきた権利もあります。自分の顔や姿を無断で撮影・公表されない肖像権、有名人の氏名や肖像が持つ経済的な価値を守るパブリシティ権です。芸能人の写真が広告に無断で使われて問題になるニュースを思い浮かべると、イメージしやすいでしょう。

2. セキュリティ関連法規

インターネットの世界にも「これをやったら犯罪です」という明確なルールがあります。この章では、サイバー空間での安全を守るための代表的な法律を見ていきます。技術で防ぐ対策(セキュリティ分野)と、法律で禁止する対策(法務分野)は、いわば車の両輪です。

サイバーセキュリティ基本法と不正アクセス禁止法

国全体としてサイバー攻撃にどう向き合うかという基本方針を定めた法律がサイバーセキュリティ基本法です。これは特定の攻撃行為を罰する法律というより、国・自治体・企業がそれぞれどう役割分担してサイバーセキュリティに取り組むべきかという、施策の土台となる考え方を示したものだとイメージしてください。

一方、他人のIDやパスワードを使って許可なくシステムに侵入する行為そのものを取り締まるのが不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)です。ここで押さえておきたい重要なポイントは、実際に情報を盗んだり壊したりといった被害が発生していなくても、他人になりすましてログインを試みた・成功させたという行為自体が処罪の対象になるということです。「何も盗んでいないから大丈夫」ではなく、「鍵のかかった家のドアを勝手に開けようとした時点でアウト」と考えるとわかりやすいでしょう。

個人情報保護法という一番身近な法律

私たちの生活に最も身近なセキュリティ関連法規が個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)です。名前、住所、生年月日など「誰の情報か特定できるもの」を扱う企業には、さまざまな義務が課されます。個人情報を実際に取り扱う事業者を個人情報取扱事業者と呼び、その事業者を監督する国の機関が個人情報保護委員会です。

個人情報保護法には、細かい用語の使い分けがよく出題されます。マイナンバーや免許証番号のように、その番号だけで個人を特定できる情報を個人識別符号と呼びます。病歴や犯罪歴など、特に慎重な扱いが必要な情報は要配慮個人情報として、より厳しいルールが課されます。また、氏名などを取り除いて特定の個人が分からないよう加工したうえで、元のデータには戻さない前提で活用できるようにした情報を匿名加工情報と呼びます。

個人情報を第三者に渡す際の同意の取り方にも2つの型があります。あらかじめ本人から「使っていいですよ」という同意を得てから利用するオプトインと、あらかじめ利用を知らせたうえで「やめてほしい」という意思表示があれば利用を止めるオプトアウトです。同意を先にもらうか、拒否の機会を用意するかという順番の違いを意識しておきましょう。こうした個人情報を他の会社などへ渡す行為全般を第三者提供と呼び、原則として本人の同意が必要になります。なお、マイナンバー(個人番号)の取り扱いについては、個人情報保護法とは別にマイナンバー法という専用の法律で細かくルールが定められています。

国際的な広がりとその他の法律

個人情報の保護は日本国内だけの話ではありません。EU(欧州連合)が定めた一般データ保護規則(GDPR)は、EU域内の個人データを扱う企業に世界共通レベルで厳しい義務を課す規則として知られています。GDPRには、本人が「自分の情報を消してほしい」と請求できる忘れられる権利(消去権)という考え方も含まれています。また、氏名などを一時的なコードに置き換えて元に戻せる状態にしておく仮名化と、完全に元へ戻せないよう加工する匿名化は、似ているようで「復元できるかどうか」という点で大きく異なるので混同しないようにしましょう。

このほかにも押さえておきたい法律があります。広告目的のメールを無差別に送りつけることを規制する特定電子メール法、コンピュータウイルスを作成・提供・保管する行為そのものを処罰する不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)です。「ウイルスを人に感染させたら」ではなく「ウイルスを作った・持っているだけ」でも罪に問われうる、という点がポイントです。

3. 労働関連・取引関連法規

会社で働くこと、会社同士で取引をすること、それぞれの場面にも守るべきルールがあります。この章では「働く人を守る法律」と「取引の公平さを守る法律」の2つに分けて整理していきます。

働く人を守る労働関連法規

会社と働く人との関係を定めた基本的なルールが労働契約法です。そのうえで、労働時間や賃金など「これだけは絶対に守らなければならない最低ライン」を具体的に定めているのが労働基準法です。たとえば、法律で決められた時間を超えて残業させる場合に会社と労働者代表との間で結ぶ必要がある36協定、始業・終業の時刻を働く人自身がある程度自由に決められるフレックスタイム制、実際の労働時間ではなくあらかじめ決めた時間働いたとみなす裁量労働制、そしてこれを下回る給料を支払ってはいけないという最低賃金は、いずれも労働基準法に関わる代表的な用語です。

自社で人を雇うのではなく、他社から人材を送ってもらう場合に関わるのが労働者派遣法(労働者派遣事業法)です。人を「貸し出す」ビジネスであるため、派遣を行う事業者にはあらかじめ国の認可を受けることなど、厳格な規定が課されています。このほか、働く人の安全や心身の健康を守る労働安全衛生法、パワーハラスメントの防止を企業に義務づける労働施策総合推進法(パワハラ防止法)も、働き方改革を進めるうえで重要な法律です。

働く場面での契約についても整理しておきましょう。仕事上で知り得た秘密を他に漏らさないと約束する守秘義務契約は、業務委託や退職の場面でよく登場します。また、仕事の依頼のしかたにもいくつかの型(契約類型)があります。完成させた成果物に対して報酬を支払う請負契約、労働の提供そのものに対価を支払う雇用契約、専門的な事務処理を依頼する(準)委任契約があり、それぞれ「何に対してお金を払っているのか」が異なります。IT業界では、システム開発を請負契約で発注する一方、専門家によるコンサルティングは委任契約で結ぶ、といった使い分けがよく見られます。

取引の公平さを守る取引関連法規

会社同士の取引にも、立場の弱い側を守るためのルールがあります。中でも重要なのが中小受託取引適正化法(取適法)です。これは、体力の弱い中小の受託事業者が、発注元から代金の支払いを不当に遅らされたり値引きを強要されたりしないよう保護するための法律です。以前は「下請法」という名前で知られていましたが、IPAシラバスの改訂により現在は「中小受託取引適正化法」という名称で扱われている点に注意してください。ITパスポート試験でシステム開発の外注に関する出題があった場合、代金の支払いが不当に遅れていないかを問う文脈でこの法律が登場することがあります。

金融とITが結びつく場面に関わる法律もあります。電子マネーや送金サービスなど、お金の決済に関わる新しいサービスを規制する資金決済法、株式や投資信託の売買などを規制する金融商品取引法です。フィンテック関連のサービスを立ち上げる際には、これらの法律への理解が欠かせません。

消費者を守るための法律も見ておきましょう。大げさな表現で消費者をだますような広告や、広告であることを隠して宣伝するステルスマーケティングを規制する景品表示法、通信販売やクーリングオフの仕組みを定める特定商取引法、市場での公正な競争を守る独占禁止法、製品の欠陥によって消費者が被害を受けた場合の企業の責任を定めるPL法(製造物責任法)があります。また、巨大なオンラインモール等の運営事業者に取引条件の開示などを求める特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律も、ネット取引が拡大する中で存在感を増しています。「誰を、何から守るための法律か」をセットで覚えておくと、初見の選択肢にも対応しやすくなります。

4. その他の法律・ガイドライン・情報倫理・標準化

法務の最後の章では、法律という「必ず守るべきルール」よりも一段広い、企業や個人が守るべき「規範」や「マナー」、そして製品やサービスの土台となる「標準化」について学びます。

コンプライアンスとコーポレートガバナンス

企業が守るべきものは法律だけではありません。法律には明記されていなくても、社会から信頼される企業であるために自ら守るべき倫理規定などをまとめてコンプライアンスと呼びます。従業員や取引先の人権を尊重するビジネスと人権、職場でのいじめや嫌がらせを防ぐハラスメント対策への取り組みは、いずれもコンプライアンスの重要なテーマです。

企業の経営そのものが健全に行われているかを監視し、顧客や株主、市場からの信頼を得るための仕組みをコーポレートガバナンスと呼びます。その具体的な制度として、勤務先の不正を内部から通報した人が不利益な扱いを受けないよう保護する公益通報者保護法、上場企業などに対して財務報告の正確性を確保する体制の整備を義務づける内部統制報告制度があります。「不正を見つけた人が損をしない仕組み」と「不正そのものが起きにくい体制づくり」の両輪だとイメージすると理解しやすいでしょう。

データ駆動型社会の情報倫理

データやインターネットが社会の隅々に浸透した今、法律だけではカバーしきれない「モラル」や「マナー」の領域を情報倫理と呼びます。SNSやインターネット掲示板での誹謗中傷に対応するため、発信者情報の開示請求や投稿の削除手続きの迅速化を定めた情報流通プラットフォーム対処法、企業がSNS運用時に社員が守るべきルールをまとめたソーシャルメディアポリシー(ソーシャルメディアガイドライン)、インターネット上での礼儀作法であるネチケット(ネットマナー)は、いずれもオンラインでのふるまいに関わる用語です。

研究や統計の場面で信頼を損なうデータのねつ造・改ざん・盗用、不幸の手紙のように無関係な人に転送を促すチェーンメール、真実ではない情報が拡散するフェイクニュース、特定の集団への差別的な発言であるヘイトスピーチは、いずれもネット社会で問題視される行為です。また、SNSで自分に似た意見ばかりが返ってきて視野が狭くなるエコーチェンバー、AIのおすすめ機能により自分の好みに合う情報ばかりが表示され偏った情報環境に陥るフィルターバブル、一度ネットに公開した情報が半永久的に残り消せなくなるデジタルタトゥーも、現代ならではの情報倫理上の課題です。子どもを有害サイトから守るフィルタリングペアレンタルコントロール、情報の真偽を検証するファクトチェックといった対策も押さえておきましょう。そしてAIの普及に伴い、倫理的・法的・社会的な課題全体を指すELSI(Ethical, Legal and Social Issues)という考え方も重視されています。AIが学習に使うデータやAIが生成する成果物についても、個人情報保護やプライバシー、秘密保持の観点からの配慮が欠かせません。

情報公開請求と環境関連法

行政機関が作成した文書について、国民であれば誰でも開示を求めることができる制度を定めた法律が情報公開法です。「行政は何をしているのか」を国民がチェックできるようにする、透明性のための仕組みだと考えるとよいでしょう。このほか、企業活動が環境に与える影響を減らすための法律として、廃棄物の適正な処理を定める廃棄物処理法、資源の再利用を促すリサイクル法、脱炭素社会への移行を後押しするGX推進法があります。

標準化の意義と標準化団体

最後に、モノやサービスの規格をそろえる「標準化」について学びます。標準化には大きく2つの成り立ち方があります。特定の企業の製品が市場で広く使われるうちに、事実上の標準として定着するデファクトスタンダードと、公的な標準化団体が正式な手続きを経て定めるデジュレスタンダードです。また、複数の企業が集まって業界内の標準を決めるフォーラム標準という形もあります。身近な標準化の例としては、商品に印刷されている縞模様のバーコード、日本国内の商品識別コードであるJANコード、四角い模様で大容量の情報を読み取れるQRコードが挙げられます。

代表的な標準化団体も押さえておきましょう。国際的な工業規格を定めるISO(国際標準化機構)、電気・電子技術の国際規格を定めるIEC(国際電気標準会議)、電気・電子工学分野の規格を定めるIEEE、Web技術の標準化を進めるW3C、日本国内の工業規格であるJIS(日本産業規格)です。ISOが定める規格にはさまざまな分野があり、品質管理の仕組みを定めるISO 9000、環境への配慮を管理する仕組みであるISO 14000、企業の社会的責任について手引きを示すISO 26000、情報セキュリティマネジメントシステムについて定めるISO/IEC 27000、人的資本に関する情報開示の指針であるISO 30414があります。日本独自の規格にも、リスクマネジメントの考え方を示すJIS Q 31000、ITガバナンスについて定めるJIS Q 38500があります。数が多く感じますが、「どんな分野の、何を標準化するための規格か」をひとつずつセットで覚えていくのが近道です。

本番での解き方

  • 「著作権は自動発生、産業財産権は登録して発生」という違いをまず固めると、知的財産権全体の整理が一気に楽になる
  • 不正アクセス禁止法は「実害がなくても侵入行為自体で違法」という点がひっかけ問題の定番なので要注意
  • オプトインとオプトアウトは「同意を先にもらうか」「拒否の機会を用意するか」の順番で区別する
  • 中小受託取引適正化法は旧名称の下請法で覚えている人が多いので、名称変更を必ず押さえておく
  • 標準化団体は「ISO=工業規格全般」「IEC=電気電子」「IEEE=電気電子工学」「W3C=Web」「JIS=日本国内」と、担当分野をワンフレーズで対応させて覚える

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